両変形性膝関節症(外反変形)のリハビリテーション

運動療法の導入と生活指導

■目的:

・関節の安定性を高め、日常生活や軽負荷運動への耐性を回復

■アプローチ:

  • 筋力トレーニング(膝負担軽減を意識)
    • クアドセッティング、SLR、内側広筋・中殿筋・ハムストリングス
    • TKE(端座位やセラバンド)
    • ニュートラルアライメントでのスクワット
  • 柔軟性向上
    • ハムストリングス、腸腰筋、殿筋、ふくらはぎ
  • 生活指導
    • 階段昇降の仕方、しゃがみ込み回避、立ち上がり動作改善
    • 体重コントロールの必要性説明
  • トレーニング例(週3-4回)
    • 水中歩行
    • 自転車エルゴ(負荷なし→徐々に)

競技復帰に向けた強化・動作トレーニング(6〜12週)

■目的:

・サッカーに必要な動作に対する耐久性と動作戦略を構築

■アプローチ:

  • ジャンプ・着地動作のトレーニング
    • 両脚→片脚、マーカー踏み運動など
  • キーパーポジション特有のトレーニング
    • サイドステップ、踏み込み、低重心キャッチング
    • フィールドでの模擬動作(非接触レベル)
  • 動作再教育
    • 股関節主導の運動制御
    • KAM(Knee Adduction Moment)低減を意識した膝アライメント修正
  • サポーター併用で実戦形式への段階的復帰

再発予防・セルフケア指導(12週以降〜)

■目的:

・長期的な膝の保護とセルフマネジメント確立

■アプローチ:

  • 継続的筋トレ(特に内側広筋・中殿筋)
  • 可動域維持のためのストレッチ指導
  • 月1回ペースでのチェック&指導継続
  • テーピングやサポーターの自立使用指導
  • サッカー中止ではなく「痛みと付き合う戦略」を共有

再発予防・セルフケアの詳細

目的:

  • 日常生活や運動時の膝負担をコントロール
  • 痛みの「予兆」を察知し、自分で対処できる状態をつくる
  • サッカーを「やめる」のではなく「続けられる体」を作る

セルフケア習慣(週3〜4回のメニュー)

✅筋力維持トレーニング(15〜20分/回)

種目回数・頻度ポイント
クアドセッティング(膝伸ばし)10回×2セット痛みがない範囲で収縮を意識
SLR(膝を伸ばして足上げ)10回×2セット股関節と膝をまっすぐに保つ
セミスクワット10回×2セット膝がつま先より前に出ない
TKE(セラバンドで膝伸展)10回×2セット内側広筋に意識を集中
ヒップアブダクション(中殿筋)10回×2セット骨盤が傾かないよう注意

✅柔軟性ケア(ストレッチ/1日1〜2回)

部位方法時間
ハムストリングス座位または仰向けで前屈20〜30秒×2
腸腰筋片膝立ちストレッチ20〜30秒×2
大臀筋仰向けで膝抱え込み20〜30秒×2
ふくらはぎ(腓腹筋)壁押しストレッチ20〜30秒×2

日常生活の注意点

シーン注意ポイント
立ち上がり・階段股関節主導、膝をねじらず真っすぐ
長時間の座位30分に1回は軽く膝を動かす
歩行時の靴クッション性のある靴を選ぶ(かかとの安定が重要)
サッカー後必ずアイシングとストレッチを習慣化する

再発サインのセルフチェック

症状対応
運動後の違和感が2日以上続く休息+アイシング+運動量を一時的に減らす
膝の「引っかかり感」や「ガクッと感」運動中止+整形外科再診を検討
膝内側の熱感・腫れサポーター使用+医師相談も視野に

サッカーを続けるための工夫

  • 軽いジョグやパス練習から復帰(全力キックは最終段階)
  • スライディングやジャンプキャッチは段階的に再開
  • 練習前後の「セルフチェック&ケアルーティン」定着
  • サポーターやテーピングの併用(特に寒冷時)

モチベーション維持の工夫

  • 3ヶ月ごとの筋力テストやフォーム撮影で成長を実感
  • 理学療法士との月1フォローアップ(痛み出現の予防)
  • チーム内で「ケガ予防仲間」をつくる

まとめ

「膝が痛い=運動できない」ではなく、
“膝と付き合いながらサッカーを楽しむ”という選択肢を提示することが重要です。

膝の再発予防には、“ちょっとした習慣”の継続が何よりも効果的。
無理なく実行できる内容に落とし込み、本人が「できる」と思える工夫が鍵になります。

再発予防のためのジムでのセルフケアプログラム(週2〜3回)

前提ポイント

  • 基本は痛みの出ない範囲で実施
  • 下肢だけでなく体幹・股関節周囲も強化
  • 高重量は避け、フォーム重視・中等度負荷×高回数(15回前後)

下肢メインのマシントレーニング(膝保護型)

種目使用マシン回数 / セット注意点
レッグプレス(45°)Leg Press15回×2〜3セット膝がつま先より前に出ない・可動域は浅めから
シーテッドレッグカールHamstring Curl15回×2〜3セットゆっくり動作、反動NG
アダクション・アブダクションHip Adduction / Abduction各15回×2〜3セット中殿筋と内転筋を丁寧に意識
レッグエクステンション(軽負荷)Leg Extension10〜15回×2セット(※痛みなければ)深く曲げすぎず0〜30°で

股関節・体幹の補助トレーニング

種目使用マシン / 道具回数注意点
ヒップスラストスミスマシン or 自重12回×2〜3セット殿筋の収縮を意識・腰反らさない
ケーブルキックバックケーブルマシン12回×2セット / 脚股関節伸展で蹴る・膝はロックしない
プランクマット上30秒×2セット骨盤を水平に・肩の真下に肘
サイドプランク(膝付き)マット上各30秒×2セット中殿筋と体幹の安定性強化

有酸素運動(負担を抑えつつ代謝促進)

種類時間 / 負荷ポイント
エアロバイク15〜20分(低負荷)膝の曲げすぎを避け、ペダルの高さ調整
トレッドミル(傾斜ウォーク)傾斜3〜5%/20分フラット走行より膝負担が少ない
アクアウォーキングプール20分〜

ストレッチ&クールダウン(トレ後必須)

部位方法時間
ハムストリングス寝ながらタオルストレッチ20秒×2
大腿四頭筋立位 or 横向き20秒×2
股関節前面(腸腰筋)ランジストレッチ20秒×2
ふくらはぎ壁押し20秒×2

おすすめの流れ(例:週3回)

曜日内容
月曜下肢筋トレ(A)+体幹・ストレッチ
水曜エアロバイク+股関節トレ+ストレッチ
土曜下肢筋トレ(B)+プランク+アクア or ウォーク

補足ポイント

  • 「重さ」よりも「正しい動作・制御」を重視
  • 中殿筋と内側広筋の強化を常に意識
  • サッカーでの「ジャンプ・着地・蹴り動作」の再現性も、体幹・股関節の安定性がカギ

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